
日本棋院の財務状況改善に取り組む経営改革委員会は経営に関する最終報告を発表しました。報告では「経常収支の赤字が続いた場合、令和11年度ごろには安全な運転資金の確保が難しくなる」との見通しが示されました。
経営改革委は経費削減策として、棋士の給与・退職金および第一年金について 2割削減案 を提示しました。武宮理事長は記者会見で、「長年先送りされてきた課題が浮き彫りになった。正直、途方に暮れる思いだが、問題の優先順位をつけて解決したい」と率直な心境を述べました。
「破綻が見えている」――第一年金への深刻な懸念
会見で武宮理事長が特に強調したのは、日本棋院が支払い額の半分を負担する 棋士第一年金制度 の危機的状況です。現行制度を維持した場合、令和20年度末ごろには年金支払いに充てる預かり金残高が急減 すると試算されています。武宮理事長は「50年前は受給年数が決まっていたのに、今は終身給付になっている。制度が長年放置され、ゆがみがあまりにも大きくなってしまった」と語りました。
東京本院ビルは「売却・移転」または「建て替え」が有力
最終報告では、老朽化が進む市ケ谷の東京本院ビルについて、
- 売却して地区外へ移転する案
- 不動産デベロッパーと協働して建て替える案
の2案が有力であるとされています。現在の建物は、あと5年程度使用する場合に6億円超の修繕費が必要となり、現状の修繕積立金では到底賄えない状況だと指摘されました。
日本棋院、来年3月までに方針提示へ
日本棋院は、今回の最終報告を受けて2026年3月をめどに具体的な方針を示すとしています。財務基盤の再建と制度改革は、日本棋院の将来に直結する大きな課題となり、今後の動向が注目されます。