赤字経営が続く囲碁の日本棋院が、プロ棋士の年間採用数の削減に踏み切ることが明らかになりました。これまで年6人だった採用枠を、2028年度からは年4人に縮小します。狭き門がさらに狭まるこの決定に、プロを目指す子どもたちとその家族の間に波紋が広がっています。
保護者から嘆きの声
3月に東京・市ケ谷の日本棋院本院で開かれた院生保護者会では、採用枠削減の理由として「経営の厳しさ」が説明されました。しかし、保護者からは「経営難のツケを子どもに払わせるのか」「夢がなさすぎる」といった反発の声が相次ぎ、予定を超える2時間以上の議論となりました。棋院側は「ご理解を」と繰り返しましたが、溝は埋まりませんでした。
採用枠の具体的な変更内容
日本棋院では、東京本院・関西総本部・中部総本部の3拠点で選抜試験を行ってきました。今後は以下のような段階的な削減が行われます。
- 東京:毎年3人 → 2人に
- 関西・中部:毎年計2人 → 隔年(2人→1人→2人…)で1.5人に
- 女流棋士:毎年1人 → 隔年(1人→0人→1人…)0.5人に
また、東京で実施される選抜試験のうち、冬季試験の合格者も2人→1人に減少します。
プロ棋士への道はもともと険しいものであり、受験者の棋力はすでに並のプロに匹敵すると言われています。院生の多くは、家族とともに上京しながら日々修業を重ねており、その存在は「囲碁界の宝物」と称されています。それにもかかわらず、その門戸がさらに狭まることへの不安は大きく広がっています。
長年の赤字体質と膨らむ人件費
日本棋院の経営悪化の背景には、長引く囲碁人気の低迷と、棋士への人件費負担の増加があります。経常収益に占める棋士への給与や年金などの割合は、30年前の約4割から5割超に拡大しています。成績による引退制度がない囲碁界では、棋士数の増加が大きな財政負担となっています。
苦渋の決断
日本棋院の関達也常務理事は「採用減は避けられるものなら避けたかった。組織立て直しのための苦渋の選択です。状況が改善すれば、採用数を元に戻すことも可能です」と説明しています。
将来の囲碁界を担う子どもたちの夢と、経営再建という両立の道はあるのか...