2021年5月12日
群馬県高崎市の「旧井上房一郎邸」で11日から打たれていた第76期本因坊戦七番勝負第1局(毎日新聞社、日本棋院、関西棋院主催、大和証券グループ協賛、高崎市など共催)は12日午後7時4分、井山裕太本因坊が184手で挑戦者の芝野虎丸王座に白番中押し勝ちし、10連覇に向けて幸先のよいスタートを切った。持ち時間各8時間のうち残り時間は芝野1分、文裕10分。第2局は5月24、25の両日、秋田県能代市の旧料亭金勇で行われる。
1日目の序盤は早い流れとなったが、中盤に入って長考の応酬となり、右辺での激しい競り合いとなった。文裕の封じ手(78手目)は「13の十」で、黒地を減らす狙いの早生きの一手だった。文裕が白88と右上隅にツケると、芝野は1時間9分長考して黒89とカケツいだが、文裕は白102までで生きを確保した。昼食休憩後、芝野は左辺や下辺に黒105、113と勝負手を繰り出すが、文裕が冷静に対応して狙いを封じ込める。終盤、芝野は左辺で地を確保しようと粘るが、文裕が着実な打ち回しで振り切った。
解説の河野臨九段は「長い持ち時間での戦いに強い本因坊が、本局でもその力を安定して発揮した印象です。芝野王座も随所にらしさを見せ、2局目以降の戦いも楽しみになりました」と話した。
本因坊文裕の話
右上の黒地を荒らして少しいけるかなと思った。次も自分なりにしっかり準備して悔いのない戦いをしたい。
芝野虎丸王座の話
今日の碁はあまり内容がよくなかった。次に向けて気持ちを切り替えて打てたらいいかなと思う。
特設ページ:第76期本因坊戦挑戦手合七番勝負
2021年4月28日
28日に行われた囲碁タイトル戦「大和ハウス杯 第59期十段戦五番勝負」の最終第5局は、挑戦者の許家元八段が、粘る芝野虎丸十段を振り切り、念願の初十段を奪取した。
第4局まですべて黒(先)番が勝利してきた今期の五番勝負。最終局のためあらためてニギリが行われ、黒番になった許は黒25などうまく仕掛け右上黒49と振りかわった。
芝野の右下白72が珍しい一手で、黒77を誘って激しい戦いに発展した。昼食休憩をはさみ64分の長考で芝野は白80と打ったが、左上黒85が絶妙な一手で許が優位に立つ。
各所で難解な争いがおこる中、右辺白110、112と打って芝野が盛り返すが、左下の黒125、127が許の冷静な打ちぶり。芝野は146の勝負手で黒石を取りにいくが、許が中央の黒177から上辺を取りにいき勝負を決めた。
令和の囲碁界を牽引する両棋士の大舞台での対局は、昨秋の王座戦五番勝負以来。「意識して速く打つよう心がけた」と振り返る許。一方の芝野は「シリーズを通じて全体的に勝負どころでミスが多かった。防衛できずに残念」と声を落としていた。
特設ページ:第59期十段戦挑戦手合五番勝負
関連棋譜:【第59期十段戦挑戦手合五番勝負第4局】【第59期十段戦挑戦手合第5局】(黒)許家元八段 対 芝野虎丸十段(白)
2021年4月20日
「大和ハウス杯第59期十段戦五番勝負」(産経新聞社主催)の第4局が20日午前10時から、東京都千代田区の日本棋院で行われ午後4時44分、芝野虎丸十段が149手までで許家元八段に黒番中押し勝ちし、対戦成績を2勝2敗のタイにした。最終第5局は28日に同所で打たれる。
右下黒5と芝野が愛用する一間ジマリの布石で始まった本局。許は右辺白46、48で仕掛ける。芝野が左辺に打った黒43では、中央53あたりに打てば右辺の黒地も大きくなったが、白に勝負をされるのを嫌い左辺に向かう作戦。午前中に55手まで進む速い展開となった。
許が本局最長の33分考えた右辺白58がやや疑問で、黒59から75まで、中央の白一団を取り込んだ芝野が打ちやすい展開にした。
許は白98で中央の石を補強しつつ、中央黒の攻め取りを目論むが、芝野は黒101、115など丁寧に補強。左辺の黒123も好手で、リードを広げた。
力強い打ちまわしを見せる芝野に対し、許は考慮時間を使って打開策を探るが光明が見いだせず、黒149に投了した。
対局後、芝野は「131、133と打つことができ手ごたえを感じた。大変な内容の碁が続いているが、集中して打ちたい」と意気込みを語った。一方の許は「次は泣いても笑っても最後なので、全力を尽くして挑みたい」と気持ちを切り替えていた。
特設ページ:第59期十段戦挑戦手合五番勝負
2021年3月24日
「大和ハウス杯 第59期十段戦五番勝負」(産経新聞社主催)の第2局が24日午前9時半から滋賀県長浜市の「ホテル&リゾーツ長浜」で行われ午後3時52分、芝野虎丸十段が157手までで、挑戦者の許家元八段に黒番中押し勝ちし、対戦成績を1勝1敗とした。持ち時間各3時間で残りは芝野十段48分、許八段が3分。第3局は4月8日、長野県大町市の「ANAホリデイ・インリゾート信濃大町くろよん」で行われる。
滋賀県内では49年ぶりの十段戦開催となった本局。最新形の立ち上がりのあと、芝野が下辺黒19に打ち込み競り合いに。白32から36が許らしい力強い構想で、中央に進出。白38が手厚く許が打ちやすくした。
押されている局面で、芝野が中央左に黒57とハネ出したのが鋭く、相手に流れを渡さない。午後に入り、許の下辺白70は誤算があったようで「98の地点に打っていたほうが無難だった」と解説の結城聡九段。
黒81から「花見コウ」と呼ばれる白には難しい局面になった。このあと右下黒115から117が鋭く、芝野が勝利に近づく。持ち時間が少ない許に対し、約1時間残していた芝野が正確に読み切り、投了に追い込んだ。
対局後、芝野は「まずは1つ勝てて安心した。次も集中して打てれば」と話した。許は「(白70の場面は)黒71にハネ出され見損じに気づいた。(負けは)気にせず、全力を尽くしたい」と前向きに語った。
特設ページ:第59期十段戦挑戦手合五番勝負
2021年3月2日
「大和ハウス杯 第59期十段戦五番勝負」(産経新聞社主催)の第1局が2日午前9時半から大阪府東大阪市の大阪商業大学で行われ午後5時44分、許家元八段が205手までで、防衛を目指す芝野虎丸十段に黒番中押し勝ちし、初の十段奪取へ発進した。持ち時間各3時間で、残りはともに1分。第2局は24日、滋賀県長浜市のホテル&リゾーツ長浜で行われる。
11年連続開催となった同大での開幕戦。62手まで進んだ午前中は、四隅の大場を打ちあう様子見の穏やかな展開になった。
形勢が揺れ動く中、中央白142が芝野の気迫の一着で流れを引き寄せる。
ただ、持ち時間が少なくなるなか、芝野に見損じが出る。芝野が中央に白170、172と打った局面は133の左に打ったほうがよかったよう。許が左辺黒175から181と鮮やかに決め、逆転勝ちした。
対局後、許八段は「いつもより時間の使い方を意識して戦った。第2局も厳しい戦いになると思う」、芝野十段は「最後にチャンスがあったのに逃したのが残念」と話した。
特設ページ:第59期十段戦挑戦手合五番勝負
2021年1月30日
第68期王座戦五番勝負を制した芝野虎丸王座の就位式が29日、東京都内で行われた。
昨年12月3日に決着した許家元八段とのシリーズは、2人あわせた年齢が七大タイトル戦で最も若い組み合わせだった。3勝1敗で自身初の防衛を果たした芝野王座は「激しく、複雑な内容ばかりだった。(勝利を決めた)第4局は大きな戦いのなか、半目差で勝つことができたのは運が良かった」と喜びを語った。並行して行われていた名人戦七番勝負では、昨夏の本因坊戦七番勝負に続いて井山裕太三冠に敗れているだけに「調子がよくないなか、防衛できたのはうれしい」と振り返った。
3月2日には「大和ハウス杯 第59期十段戦」(産経新聞社)が大阪府東大阪市の大阪商業大学で開幕する。対戦相手は、ふたたび許八段だ。28日に挑戦権を獲得した許八段は「芝野さんは年下だが強い相手。精いっぱい打ちたい」と話している。
芝野は「同時期に(プロを志願する)院生になって、どんどん上のクラスにあがっていく許さんは目標の存在だった。ここからさらに頑張っていきたい」と2度目の同世代対決に意気込んでいた。
2021年1月21日
名人戦リーグ第2ラウンドは21日に2局打たれ、 前名人の芝野虎丸王座は本木克弥八段に黒番半目負けし、開幕2連敗となった。もう1局は許家元八段が安斎伸彰七段に黒番2目半勝ちし、こちらは開幕2連勝。ともに優勝候補の「令和三羽ガラス」だが、明暗分かれる出だしとなった。
芝野―本木戦は序盤から戦いらしい戦いのないままヨセ勝負となり、勝利の女神は本木にほほ笑んだ。芝野は第1ラウンドの対許戦に続く半目負け。かつて剛腕で鳴らした本木は、自ら仕掛けない「我慢の碁」に棋風改造。その特長がよく出た一局をものにし、リーグ成績を1勝1敗の五分に戻した。
もう一局は許が安斎との難戦を制し、首位の一力遼天元に2勝0敗の同スコアで並んだ。ふたりは2月11日の第3ラウンドで直接対決する。前期も前半戦で全勝対決し、これを制した一力が最後まで優勝争いに残った。許は「全勝といってもまだ2勝だけ。先は長いが、一力さんには前期のリベンジをしたい」と話した。
許は十段戦挑戦者決定戦にも進出するなど、好調をキープ。一力もこの日あった本因坊戦リーグを勝って4勝無敗とし、単独首位に立つなど絶好調だ。ふたりの直接対決は、リーグ戦のゆくえを占うヤマ場となる。
初リーグの安斎は0勝2敗となり、芝野同様、厳しい立ち上がりとなった。
2020年12月3日
芝野虎丸王座が初防衛を果たした。 3日、神奈川県秦野市「陣屋」で打たれた第68期王座戦5番勝負第4局で、挑戦者の許家元八段に308手までで黒番半目勝ち。対戦成績を3勝1敗として、タイトルを防衛した。終局は午後7時41分だった。「苦しい場面も多く、内容は良くなかったかもしれないが、粘り強く打てた」と、シリーズを振り返った。
芝野は今年6~7月の本因坊戦7番勝負に初挑戦したが、本因坊文裕に1勝4敗と敗れた。初防衛を目指した8~10月の名人戦7番勝負もやはり1勝4敗で、井山にタイトルを明け渡している。「タイトル戦で成績が良くなかった。勝てて良かった」と喜びをかみしめていた。
関連棋譜:【第68期王座戦挑戦手合第4局】(黒)芝野虎丸王座 対 許家元八段(白)
特設ページ:第68期王座戦挑戦手合五番勝負
2020年11月22日
第22回農心辛ラーメン杯世界囲碁最強戦第7戦、230手までで芝野虎丸九段が申旻埈九段に勝利、次戦の相手は中国の唐韋星九段。選手の残り人数は日本3名、韓国2名、中国3名です。
農心辛ラーメン杯の優勝賞金は5億ウォン、3連勝すると1000万ウォンの連勝賞金(3連勝後1勝追加するたびに1000万ウォンを追加支給)。制限時間はそれぞれ1時間に秒読み1分1回です。
2020年11月17日
第68期王座戦五番勝負の第3局が17日、神戸市で行われ、挑戦者の許家元八段が293手までで、芝野虎丸王座に黒番5目半勝ちし、対戦成績を1勝2敗としました。第4局は12月3日に神奈川県秦野市で打たれます。
初防衛が持ち越された芝野は、「正しく打てば勝てたかもしれない。残念。次の1局に集中していけたら」と気を取り直していました。
許は、「最後の最後まで分からなかった。(終局寸前)少し残るかなと思いました。次もいい内容で打てたら」と話しました。
特設ページ:第68期王座戦挑戦手合五番勝負
2020年11月6日
第68期王座戦(日本経済新聞社主催)五番勝負の第2局は6日朝から仙台市の仙台ロイヤルパークホテルで打たれ、午後6時26分に芝野虎丸王座が221手で挑戦者の許家元八段に黒番中押し勝ちしました。第1局に続く連勝で、タイトル初防衛まであと1勝としました。
持ち時間各3時間のうち残りは王座1分、挑戦者2分です。第3局は11月17日、神戸市のホテルオークラ神戸で打たれます。
芝野王座が用意した布石は20~30年前に流行した高中国流で、人工知能(AI)で研究し直して有効性を確認していました。挑戦者は上辺で地合いを稼ぎ、黒の勢力下の右辺で白60から動き出します。それに対し「右下の白石と絡めながら、手厚く冷静に攻めた芝野王座がペースを握った」と立会人の小林光一名誉棋聖ら控室のプロ棋士はみていました。
焦点は左辺に転じ、王座は黒101から中央の白石に狙いを定めます。挑戦者が紛れを求めて勝負手を連発する中、王座の左上の黒159が読みの入った手でした。左上隅の白石を仕留められた挑戦者は、代償として右上の黒の大石に襲いかかりますが、王座が冷静に対応しました。
解説の平田智也七段は「少しでも間違えれば大逆転する緊迫した場面が続いた好勝負だったが、王座の読みが一歩上回った」と話しています。
特製ページ:第68期王座戦挑戦手合五番勝負
2020年10月23日
第68期王座戦五番勝負の第1局が23日、横浜市で行われ、芝野虎丸王座が184手までで、挑戦者の許家元八段に白番中押し勝ちし、初防衛に向け発進しました。第2局は11月6日に仙台市で打たれます。
20歳11カ月の芝野王座と22歳9カ月の許八段のシリーズは、平成26年の本因坊戦で井山裕太本因坊(当時24歳11カ月)に伊田篤史八段(同20歳1カ月)が挑んだ際の2人を足した年齢を塗り替える、七大タイトル戦史上最年少対決です。
芝野王座はこれまでの七大タイトル戦で張栩九段、井山四冠、村川大介九段と対戦。許八段は井山四冠、羽根直樹九段と戦っており、同世代と対戦するのはともに初めてです。
これまでの対戦成績は芝野王座の4勝2敗。許八段は前期の王座戦挑戦者決定戦や今春の本因坊戦プレーオフなど、大きな舞台で敗れているだけに、「なかなか勝つことができていない相手で厳しい戦いになると思うが、全力を尽くしたい」と闘志をみせていました。
芝野王座は今春の十段戦五番勝負(産経新聞社主催)を制し、史上初の“無傷の三冠”になったが続く本因坊戦と、今月14日に決着した名人戦でともに井山四冠に敗れている。これから長くしのぎをけずることになるであろう許八段が相手だけに、譲れないシリーズです。
特製ページ:第68期王座戦挑戦手合五番勝負
2020年10月19日
神奈川の文化・スポーツの発展に功績のあった個人・団体に贈られる第69回神奈川文化賞と神奈川スポーツ賞(県、神奈川新聞社主催)が16日、発表されました。今後の活躍が期待される文化賞未来賞には、囲碁棋士の芝野虎丸さんら2人が選ばれ、神奈川スポーツ賞にはフィギュアスケート選手の鍵山優真さんが選出されました。
漫画「ヒカルの碁」のファンだった父の影響で、2歳上の兄・龍之介さん(二段)とともに囲碁を始める。2014年入段。17年竜星戦で最年少優勝(17歳8カ月)、入段から2年11カ月での全員参加棋戦のタイトル獲得と七段昇段も最短記録。同年に新人王戦優勝。19年に史上初の10代名人、史上最年少で七大タイトル獲得、九段昇段、王座奪取。20年に十段を奪取し、史上最年少で3冠を達成しました。
2020年10月14日
三冠同士の頂上決戦となった第45期囲碁名人戦七番勝負(朝日新聞社主催)の第5局は14日午後7時26分、挑戦者の井山裕太棋聖が芝野虎丸名人に178手までで白番中押し勝ちを収め、シリーズ4勝1敗で名人位を奪取しました。
井山は棋聖、本因坊とあわせ、七大タイトルの中でも特に上位に位置づけられる三つのタイトルを独占。自身3度目の「大三冠」に返り咲きました。
名人位獲得は3期ぶり7回目。過去に3度失冠したが、2013年、17年、今回と、すべて名人復位と同時に大三冠を達成。ほかに大三冠を遂げたのは趙治勲名誉名人だけ。趙は2度達成しているが、それを上回る3度目の大三冠は、井山の驚異的な復元力を物語ります。
今期名人戦は、一昨年に七冠独占が崩れてから初めて挑戦者として臨んだタイトル戦でした。前期に史上初の10代名人になった芝野に対し、積極的な打ち回しで流れを手放さず、芝野の挑戦を受けた今夏の本因坊防衛戦に続きシリーズを制しました。
保持する七大タイトルは大三冠に天元を加えて四冠に。通算獲得数も49に伸ばし、2位の趙の42を引き離し、独走しています。
2020年10月8日
本因坊リーグの開幕戦、芝野虎丸三冠―佐田篤史七段は、芝野三冠が白番半目勝ちし、白星スタートを決めました。許家元八段が鶴山淳志八段に白番半目勝ちした。今日の2局は共に半目勝負。リーグ開幕にふさわしい大熱戦となりました。
最終予選を突破した4人のうち3人がリーグ初参加で、リーグ8人中5人が20代というフレッシュな顔ぶれとなりました。最終予選を突破した大西竜平七段、佐田篤史七段、鶴山淳志八段、黄翊祖九段に加え、前期挑戦者の芝野虎丸九段、許家元八段、一力遼八段、羽根直樹九段の計8人が総当たりで、本因坊文裕への挑戦権を争います。
2020年9月30日
第45期名人戦七番勝負の第4局が9月29、30の両日、三重県鳥羽市で行われ、挑戦者の井山裕太棋聖・本因坊・天元が145手までで、芝野虎丸名人・十段・王座に黒番中押し勝ちし、対戦成績3勝1敗で3期ぶりの名人復位にあと1勝としました。第5局は13、14日に静岡県熱海市で打たれます。
中盤早々、盤面左上一帯の黒の大模様に名人の白石が突入。この一団を巡る攻防から戦いが全局に波及しました。最後は挑戦者の大石の生死をかけた戦いに発展しましたが、挑戦者がしのぎ切り、勝負を決めました。
名人は1日目の58手目の封じ手で1時間41分の大長考を払い、白石に襲いかかる中央の黒の包囲網を破りにいったが、挑戦者の黒65が好手で、望んだ図を得られなかった。劣勢を意識した名人は、唯一の攻撃目標である中央の黒の一団に脅しをかけたが、挑戦者は大胆に無視し、黒89と左辺の白二子をちぎり取り、陣地の広さの優位を決定づけました。
もはや陣地の囲い合いで追いつけない名人は、白100から黒の大石を自陣に引き込んで総攻撃にかかります。両者秒読みのなか、ぎりぎりの勝負となったが、挑戦者が際どくしのいだ。
右下から中央に伸びる黒の大石が二眼をもち生きるかどうかが焦点となっている。この黒一団は中央付近に一眼を確保しており、145手目(7の十六)で左下の白一団が取られることになり、もう一眼がはっきりした。この黒一団が生きると、白は地合いで大きく及ばなくなるため、投了は仕方がない。
「まだまだこれからだが、本局は自分らしく戦えたと思う。自分なりに納得のいく碁を打ちたい。2日目以降、少し打ちやすくなったと思っていた。黒89は成算があったというより、他にいまいちぴったりする手がなかったという感じ。いろいろよくわからないことだらけ。正しく打てばいけそうだと思っていってみた。難しい変化をはらんでいるので、正しく読み切れていたかはわからない。」
「2日目に入り、中央の黒の包囲網を破りにいったが、あまりうまくいかなかった。今日の午前中の段階で、はっきりだめといえる形勢にしてしまった。中央の黒石を取らないと勝ち目がないと思ったが、取れる石ではなさそうで、厳しいかなと思っていた。今回の碁はあまり内容がよくなかった。成績のことは気にせず、集中して打てたら。」
【第45期名人戦挑戦手合第4局】(黒)井山裕太九段 対 芝野虎丸九段(白)
2020年9月24日
第45期名人戦7番勝負の第3局は23、24の両日、山口市で打たれ、芝野虎丸名人が211手で挑戦者の井山裕太三冠に黒番中押し勝ちし、対戦成績を1勝2敗としました。第4局は29、30日に三重県鳥羽市で行われます。
「序盤からあまり見たことない形が続き、判断が難しかった。どちらかというと自信のない場面が多かったが、全体として力は出せた。」
「一つ勝てて安心した。(次局は)集中してがんばれたら。」
「白104、白106から、いろんな選択肢が生まれたので、そのいろいろを考えていた。うまくいったのは運が良かったと思う。」
「まだまだ長い戦いになる。これまで通り結果を恐れず、次は自分の納得のいく碁を打てたら。」
「仕掛けていったが、全然うまくいっていない。白の勝ち筋はわかっていなかった。実戦が一番難しい形になったと思う。」
2020年9月18日
第68期王座戦の挑戦者決定戦が18日、東京都千代田区の日本棋院で行われ、許家元八段が張栩九段を破り、初の王座戦五番勝負登場を決めました。初防衛を目指す芝野虎丸王座とのシリーズは、10月23日に横浜市で開幕します。
台湾出身の許八段はプロ8年目。初めて七大タイトルに挑んだ平成30年の第43期碁聖戦では、当時の井山裕太碁聖を3連勝のストレートで破り、七冠独占状態を崩しました。芝野虎丸三冠や一力遼碁聖と並ぶ若手実力者です。今期は、結城聡九段や山下敬吾九段といったタイトル獲得経験者を撃破しました。
「王座戦は前期も挑戦者決定戦までいきながら、負けてしまったので、挑戦することができてうれしい」と許八段。芝野三冠には前期の王座戦挑戦者決定戦や今春の本因坊戦プレーオフなど、大きな舞台で敗れているだけに、「なかなか勝つことができていない相手で厳しい戦いになると思うが、全力を尽くしたい」と闘志をみせていました。
2020年9月16日
第45期名人戦第2局が行われ、午後7時12分、213手までで芝野虎丸名人が投了しました。
井山裕太挑戦者が黒番中押し勝ちし、シリーズ2連勝としました。持ち時間各8時間のうち、両者とも残り1分となっていました。
両者は秒読みの激戦を繰り広げ、検討室では名人がよしだったが、最後に失着となりました。名人はマスクをつけ、スーツの上着を着て、投了を告げました。
第3局は23日、24日の両日、山口市の「山口市菜香亭」で行われます。
「1日目、序盤早々、左下の攻防ではっきり悪くなってしまい、あとは粘り強く打とうと思った。ここ最近は負けが続いていたので、まず一つ勝てて良かった。七番勝負としてはまだまだこれから。第3局も悔いのないよう、しっかり準備して臨みたい。」
「はっきりと読み切れていたわけではない。なんとかなるかなと思ったが、自分で思っていたより危なく、正しく打たれたら死んでいたと思う。」
「2日目はずっと大変かなと思っていたが、途中から難しくなった。白模様に入った黒の死活は難しいと思ったけど、正しく打てばいけてたと思う。最後、黒207の手をまったく見ていなくて、打たれた瞬間にまずいとわかった。」
「結果は良くなかったが、あまり気にせず切り替えて、集中して打てれば。」
2020年9月8日
第9回応氏杯1回戦は9月8日(火)に開幕しました。
日本からは井山裕太九段、芝野虎丸九段、一力遼八段、村川大介九段、河野臨九段、許家元八段が出場しましたが、一力八段、河野九段、許八段が1回戦を通過。一方、井山九段、芝野九段、村川九段は敗退しました。2回戦は明日、9月9日(水)に行われます。
対局年 | 優勝者 | 結果 | 準優勝 | コミ |
---|---|---|---|---|
2016 | 唐韋星九段(中国) | 3-2 | 朴廷桓九段(韓国) | 8目 |
2012 | 范廷鈺三段(中国) | 3-1 | 朴廷桓九段(韓国) | 8目 |
2009 | 崔哲瀚九段(韓国) | 3-1 | 李昌鎬九段(韓国) | 8目 |
2005 | 常昊九段(中国) | 3-1 | 崔哲瀚九段(韓国) | 8目 |
2001 | 李昌鎬九段(韓国) | 3-1 | 常昊九段(中国) | 8目 |
1996 | 劉昌赫九段(韓国) | 3-1 | 依田紀基九段(日本) | 8目 |
1993 | 徐奉洙九段(韓国) | 3-2 | 大竹英雄九段(日本) | 8目 |
1989 | 曹薫鉉九段(韓国) | 3-2 | 聶衛平九段(中国) | 8目 |
2020年8月26日
第45期名人戦七番勝負第1局が8月25日、26日の両日、東京都文京区で行われました。挑戦者の井山裕太棋聖・本因坊・天元が、初防衛を目指す芝野虎丸名人・十段・王座に白番1目半勝ちし、3期ぶりの名人獲得に向けて好スタートを切りました。第2局は9月15日、16日に兵庫県宝塚市で行われます。
3冠対決の第1ラウンドは、井山棋聖が制しました。終局後、井山棋聖は「1日目が終わった時点では、まだよくわからなかった。(相手の手は)厳しかった」と振り返り、「まだ始まったばかり。少しでもいい状態で第2局に臨めれば」と意気込みを語りました。
今回の名人戦は2日制で、持ち時間は各8時間の長丁場です。序盤からじっくり考える井山棋聖は、時に記録係に「58秒、59秒…」と秒読みされるギリギリの中で冷静に対応。一方、芝野名人は持ち時間を1時間9分も残しての決着でした。
芝野名人は「同じ3冠といっても、並んだとは思っていない。挑戦者の立場で向かう」とコメント。第2局以降、巻き返しを図れるかが注目されます。
2020年8月22日
第58期十段戦を制し、囲碁界史上最年少で3冠となった芝野虎丸十段(名人・王座)の就位式が8月21日、東京・市ケ谷「日本棋院」で行われました。新型コロナウイルス感染拡大防止のため、従来のホテルでのパーティー形式ではなく、允許状、賞杯、賞金目録の授与を行う簡略な式となり、わずか10分で終了しました。
芝野十段は謝辞の中で、「コロナ禍で対局が3月から6月まで中断されて大変だったが、打てて楽しかった。手応えや収穫、反省も多かった。これをいい経験にして頑張っていきたい」と述べました。
芝野十段は昨年10月に初タイトルとなる名人、11月に王座を獲得し、今回の十段でわずか8カ月での3冠達成を果たしました。この期間は囲碁界史上最速で、1976年に故加藤正夫名誉王座が碁聖、十段、本因坊を奪取した1年1カ月を上回ります。
また、20歳7カ月、プロ入りから5年9カ月での3冠達成は、「史上最年少」「史上最速」の記録となりました。この記録は、井山裕太棋聖(本因坊・天元)の23歳1カ月、プロ入りから10年3カ月を大きく塗り替えました。
2020年8月7日
第45期名人戦挑戦者決定リーグ戦の最終対局が8月6日に行われ、井山裕太三冠が林漢傑八段を破り、8戦全勝で首位となり芝野虎丸名人との七番勝負(8月25日開幕)への挑戦権を獲得しました。井山三冠は3期ぶり7度目の名人獲得を目指します。
井山三冠は平成21年に20歳4カ月で名人を獲得し、当時の最年少記録を持っていましたが、芝野名人が昨年19歳11カ月でその記録を更新しました。今期の名人戦七番勝負は、三冠同士の戦いであり、囲碁界の頂上対決となります。
井山三冠と芝野名人がタイトル戦で顔を合わせるのはこれが3度目となります。昨秋の王座戦五番勝負では芝野名人がタイトルを奪取しましたが、今年6~7月の本因坊戦七番勝負では井山三冠が防衛し、本因坊9連覇を果たしました。
8戦全勝での挑戦権獲得について井山三冠は終局後、「結果としてでき過ぎ」と語り、芝野名人との対戦については「勢いも実力もある棋士。思い切ってぶつかりたい」と意気込みを示しました。
2020年7月29日
「第13回春蘭杯世界選手権」が29日に開幕。日本勢は5人が出場し、村川大介九段と余正麒八段が勝利して2回戦進出を決めましたが、井山裕太三冠、芝野虎丸三冠、本木克弥八段は敗退しました。
この中国主催の大会は当初2月に開催予定でしたが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で延期されていました。韓国や台湾などから24人が本戦に出場しましたが、移動制限のためインターネット対局で実施されました。
2020年7月9日
第75期本因坊戦七番勝負(毎日新聞社主催)の第5局が8、9日に三重県鳥羽市で打たれ、井山裕太本因坊が、挑戦者の芝野虎丸名人に243手で白番4目半勝ちした。シリーズ4勝1敗でタイトルを防衛し、本因坊9連覇を遂げた。
七大タイトルの9連覇は、高川格九段の本因坊9連覇(1952~60年)と並ぶ歴代2位タイ。趙治勲名誉名人が達成した歴代1位の本因坊10連覇(89~98年)まで、あと1期に迫った。
今期本因坊戦は、七大タイトルのうち六つを占める井山、芝野の頂上決戦になった。井山は開幕3連勝で芝野を圧倒。第4局は落としたが、第5局で完勝してシリーズを制した。昨年、史上最年少で名人になった芝野は、その後二冠を加えて井山に挑んだが、七大タイトル戦初の敗退を味わった。
2020年6月26日
芝野虎丸新十段が26日、史上最年少で3冠を達成した。今回の十段をはじめ名人、王座の3棋戦はいずれも初挑戦での奪取となり、全7冠を2度も独占した第一人者の井山裕太三冠でさえ達成できなかった前人未到の快挙だ。
芝野虎丸二冠の先勝で始まった今シリーズは、第2局で初防衛を目指す村川大介十段が勝利し、タイになった。その後、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、十段戦を含むすべての囲碁公式戦は休止、延期になった。
第2局から82日あいた今月17日の第3局を制し2勝目をあげた芝野二冠が勢いに乗り、昨秋の名人・王座獲得に続く史上最年少・最速での3冠保持者となる。
--3冠獲得。想像したことはあったか
「全然考えていなかった。ただ、足りない部分はたくさんあるので、今後も頑張らなければいけない。内容はともかく、結果が出たことはよかった」
--最年少での3冠の実感は
「日ごろから記録のようなものには、あまり関心がない。これからもタイトル戦のような大きな舞台で、少しでも多く打つチャンスを得たい」
--新型コロナウイルスの影響で対局が空いたときは、どう調整したのか
「家でネット対局をしていたが、(対面)対局がなかったことが影響したのかどうか、なかなか調子が出ずにここまで来てしまった」
--持ち時間3時間の十段戦と、2日制の本因坊戦を並行で打っている
「早打ちなので以前は短い(持ち時間)碁のほうがあっているかなと思っていたが、(昨秋の2日制の)名人戦も経験して勝てた。短い碁のほうがいいかも」
--本因坊戦では井山裕太三冠に挑み、3連敗と苦しんでいる
「布石や構想力、中盤以降の厳しさが思った以上に力強い」
--今後どう立ち向かっていくか
「井山さんがどうこうより、自分が強くなっていきたい」
2020年6月23日
8連覇中の井山裕太本因坊に、名人・王座に続く三つ目のタイトルを狙う芝野虎丸名人が挑む第75期本因坊戦七番勝負第3局(毎日新聞社主催)が22、23の両日、兵庫県宝塚市の宝塚ホテルであり、井山本因坊が172手で白番中押し勝ちした。
連勝スタートで勢いに乗る井山本因坊は、序盤から優位に立つと、終盤まで強気の攻めを続け、押し切った。これで対戦成績を3勝0敗とし、史上2位タイとなる9連覇まであと1勝に迫った。
井山本因坊は「(9連覇は)まだあまり考えられない。中盤にまずいミスもあったので、しっかり修正して次に臨みたい」。3連敗で追い込まれた芝野名人は「結果はそんなに気にせず、いい碁を打てるように頑張りたい」と話した。
芝野名人「1日目でかなり白地が多い展開になったので、ちょっと苦しいかなと。2日目に中央を突き抜いて難しくなったと思っていたが、右下隅を生かしてちょっと大変にしてしまい、攻めの打ち方をしないとダメだった。結果はそんなに気にせず、次局もいい碁が打てるように頑張りたい」
特設ページ:第75期本因坊戦挑戦手合七番勝負
2020年6月17日
第58期十段戦五番勝負(産経新聞社主催)の第3局が17日午前10時から東京都千代田区の日本棋院で行われ、挑戦者の芝野虎丸二冠が176手までで、村川大介十段に白番中押し勝ちし、対戦成績2勝1敗で初の十段奪取へあと1勝とした。午後4時35分終局。持ち時間各3時間で、残りは村川十段1分、芝野二冠が15分。第4局は26日に同所で打たれる。
第1局と同様、黒の小目から二間高ジマリの布石で始まった本局。一手間違えればつぶれる危険性もある右下を、研究済みの両者は軽快に打ち進め、黒47まで黒の厚みと、白の実利というワカレになった。
右辺黒模様を荒らしにいった白54打ち込みから、局面が動く。手抜きした左辺黒55が柔軟な発想だった。
右辺に大模様を張ったとみせかけ、左上黒61と打ったのが「英断の一手」(立会人の中小野田智己九段)。白62と両者の気合がぶつかった。黒79、81など自在に打ち回す村川が優位に立った。
非勢を意識する芝野が、左辺で白144と出たのが渾身の勝負手。「(白144に対して55の右に)ノビていればこれからの勝負だったが、黒145と右辺を取りにいったのが性急だったか」と中小野田九段。村川も局後、「見えていない手があり、取りにいかないほうがよかったか」と反省した場面だ。
白154から160と切断した芝野がその後、中央の黒を捕獲し第2局(3月26日)から82日あく、昭和52年に現行の七大タイトル戦が定まって以降、最長の対局間隔となる一局を制した。
芝野二冠の話「対局再開後、初の勝利でホッとしたが、次も気を引き締めて頑張りたい」
村川十段の話「間隔があいたので(第3局から)三番勝負のような感じ。気持ちを切り替えて臨みたい」
特設ページ:第58期十段戦挑戦手合五番勝負
2020年6月14日
第75期本因坊戦七番勝負の第2局が13、14の両日、東京都千代田区の日本棋院で行われ井山裕太本因坊が143手までで、挑戦者の芝野虎丸名人に黒番中押し勝ちし、2連勝とした。当初は北九州市で実施される予定だったが、同市で新型コロナウイルス感染拡大が続いていたため、対局場が変更された。第3局は22、23日に兵庫県宝塚市で打たれる。
終局後、井山は「中央が全然判断できず、ずっとよく分からなかったです。黒も安定している石ではないので、薄くなると一気に自信がなくなると思っていました。右下を生きて中央がそんなにひどい目に遭わなければ、地合いでは少しリードしているかなと思いました。」
芝野は「右上の打ち方が重かったかなと。予想以上に形勢がよくなく、ただ、黒もまとめ方が難しいので、粘り強く打てればいいと思っていました。第1、2局と一方的な内容になってしまいましたが、最後また頑張りたいと思います」と、巻き返しを期していました。
関連棋譜: 【第75期本因坊戦挑戦手合七番勝負第2局】(黒)井山裕太九段 対 芝野虎丸九段(白)
特設ページ:第75期本因坊戦挑戦手合七番勝負
2020年6月8日
芝野虎丸名人への挑戦権をかけた第45期名人戦リーグ戦は8日、単独首位の井山裕太3冠が羽根直樹碁聖を白番中押しで破った。これで開幕5連勝とし、挑戦権獲得に向けて大きく前進した。敗れた羽根は2勝3敗となり、挑戦権争いから脱落。残留争いに回る。
井山の次戦は、3勝1敗で2位につけている許家元八段。「言うまでもなく強敵。まだ先は長いので、悔いの残らないよう戦いたい」と話した。許は井山戦までに2局あり、今月11日に河野臨九段(1勝3敗)と、18日に林漢傑八段と対戦。連勝して井山戦を迎えれば、挑戦権のゆくえを左右する大一番となる。
リーグ戦はこの日もう一局あり、ここまで0勝4敗だった山下敬吾九段が張栩九段に白番11目半勝ちし、リーグ初白星を挙げた。張栩は2勝4敗。
山下にとって、コロナ禍で2カ月にわたり中断されていた対局再開後初の手合だった。「なにより碁を打てるのがうれしい。対局中断中、家に引きこもっていたが、気持ちをリセットできた部分があるかもしれない。初戦を勝てたので、これからも気持ちよく打てる気がする」と話した。
2020年6月3日
本因坊文裕に芝野虎丸名人が挑戦する第75期本因坊戦挑戦手合7番勝負第1局2日目が3日、山梨県甲府市の「常磐ホテル」で行われ、井山が182手で白番中押し勝ち。9連覇に向けて、好スタートを切った。
新型コロナウイルス緊急事態宣言を受け、5月に行う予定だった第1、2局を延期。本来は第3局に予定していた甲府市での対局を第1局とし、7番勝負の開幕を迎えた。
文裕は「七番勝負は始まったばかり。次も悔いのないように打つ」、芝野名人は「後悔する手はなかったので次も頑張ります」と話した。
2020年4月6日
第75期本因坊戦挑戦者決定プレーオフが6日、東京・市ケ谷「日本棋院」で打たれた。対局は激戦の末、午後9時57分に黒番の芝野虎丸名人が許家元八段に中押し勝ち。本因坊文裕への挑戦権を獲得した。
「序盤から判断が難しかった。負けの筋もあったが、勝てたのは運が良かった」と、ちょっぴり笑った。
芝野は本因坊戦7番勝負初登場。昨年10月、19歳11カ月で史上初の10代名人になった。同年12月には井山から王座を奪って史上最年少で2冠となった。今年は十段戦挑戦者として、村川大介十段に1勝1敗と最も勢いがある。「大変な対局になると思う。楽しんでやりたい」。
8人による挑決リーグ最終局は今月3日に行われ、芝野と許が6勝1敗で並んだ。以下、羽根直樹碁聖と一力遼八段は残留。河野臨九段、山下敬吾九段、志田達哉八段、横塚力七段は陥落となっていた。
注目の第1局は、5月12~13日、群馬県高崎市で打たれる予定。
2020年3月26日
産経新聞社主催の囲碁タイトル戦「第58期十段戦五番勝負」の第2局が26日午前10時から大阪市の関西棋院で行われ午後6時42分、村川大介十段が310手までで、挑戦者の芝野虎丸二冠に白番2目半勝ちし、対戦成績を1勝1敗とした。第3局は4月16日に長野県大町市の「ANAホリデイ・インリゾート信濃大町くろよん」で打たれる。
第1局と先後を入れ替え、芝野の黒番で始まった第2局は、右上隅白30~36などAIが好む仕掛けで動き出す。上辺白62まで、村川の流れがよくなったよう。
芝野の上辺黒81が狙いすました一着で、黒85~89まで盛り返した。しかし村川が右辺白98、100で鮮やかに返し技を放つと、膠着状態が長く続いた。
右辺黒171では252に打っていたほうがよく、芝野がやや失速。白174に回って、村川がやや優位になった。
残り1分の秒読みに追われながら、両者堅実に打ち進めるなか、村川が右下白248で勝利を確定させた。
解説の今村俊也九段は「一進一退の見ごたえある攻防で、どちらに勝利がころがりこんでもおかしくない熱戦だった」と振り返った。
対局終了後、タイに持ち込んだ村川十段は「半目勝負になりそうだったが、一つ勝ててほっとした。もっといい碁を打てるように頑張りたい」と話した。芝野二冠は「研究したことがない布石で、中盤以降は特に苦しかった。負け越しているわけではないので、次も今まで通り打ちたい」と反省の弁を口にし、第3局を見据えた。
2020年3月4日
産経新聞社主催の囲碁タイトル戦「第58期十段戦五番勝負」の第1局が3日午前9時半から大阪府東大阪市の大阪商業大学で行われ午後5時31分、挑戦者の芝野虎丸二冠が276手までで、村川大介十段に白番3目半勝ちし、初の十段獲得に向け先勝した。持ち時間各3時間で、残りは芝野2分、村川1分。第2局は26日に大阪市の関西棋院で打たれる。
立会人・清成哲也九段の合図で先後を決めるニギリを実施。村川先番で始まった対局は互いに序盤の研究が進んでおり、早い進行になった。上辺を厚くし、右辺でも黒35と頭を出した村川が、序盤を優位に打ち進めた。
左辺で黒81から難解なコウ争いが始まる中、午前中に88手まで進んだ。黒105とコウを解消したあと、芝野は下辺白106、108と力強く襲い掛かる。直後、黒109と妥協したあたりから、村川が悩む場面が多くなる。
形勢が揺れ動くなか、村川が右下隅黒137や、左上隅黒163と勝負手を放ち、大乱戦に持ち込んだ。
一方、芝野が上辺に踏み込んだ白180が「読む力にすぐれた芝野二冠らしい決断の一手」(解説の結城聡九段)で、流れを大きく引き寄せた。
このあと村川は粘り続けたが、芝野は冷静に対応。右辺白236と切って、勝利を手中におさめた。
対局後、村川十段は「読みが正確ではないように思ったので、しっかり鍛えて次を頑張りたい」、芝野二冠は「後半、乱れた部分もあったので、次は少しでもいい碁を打てるように頑張りたい」とそれぞれ話した。
2020年1月30日
産経新聞社主催の囲碁タイトル戦「第58期十段戦」の挑戦者決定戦が30日、大阪市北区の日本棋院関西総本部で行われ、芝野虎丸二冠が井山裕太三冠を破り、歴代最年少で初の十段戦五番勝負出場を決めた。
芝野二冠は平成11年、神奈川県生まれ。26年にプロ入り。29年、入段2年11カ月の史上最速で全員参加の一般棋戦(第26期竜星戦)で優勝した。昨年10月、19歳11カ月の史上最年少で七大タイトルの名人を獲得、11月には王座を獲得、最年少2冠となった。
七大タイトル戦には3度目の出場となる。初防衛が懸かる村川大介十段とのシリーズは3月3日、大阪府東大阪市の大阪商業大学で開幕する。
芝野二冠は「(村川十段は)戦いに強い碁という印象がある。大変な戦いになる。これまでと変わらず頑張りたい」と話した。
2020年2月7日
「第67期王座戦」を制して、史上最年少2冠となった芝野虎丸王座の就位式が7日、都内のホテルで行われた。昨年10月に史上初の10代名人となって1カ月後に、達成した快挙だ。しかも、奪ったのは国民栄誉賞棋士の井山裕太王座から。「雲の上の存在だった井山先生に5番勝負で勝てて、大きな自信になった。この先も自分のペースで頑張っていければ」と、謝辞を述べていた。
花束贈呈では、上野愛咲美女流2冠が登壇。1月31日の女流本因坊就位式では芝野が贈呈役を務めたが、今回はもらう立場となった。
2019年12月19日
産経新聞社主催の囲碁タイトル戦「第58期十段戦」の挑戦者決定戦は、井山裕太三冠-芝野虎丸名で行われることに決まった。19日に日本棋院東京本院であった準決勝で大西竜平四段に勝利した芝野名人は来年1月、すでに勝ち上がっている井山三冠と対局する。
両者は今秋の王座戦五番勝負で対決し、芝野名人が王座を奪取している。初防衛がかかる村川大介十段との五番勝負は来年3月開幕予定。
2019年12月6日
第44期囲碁名人戦七番勝負(朝日新聞社主催)で張栩前名人を破り、史上初の10代名人となった芝野虎丸名人の就位式が6日、東京都文京区のホテル椿山荘東京で開かれた。ファンや棋士ら約380人から祝福を受けた。
ふだんはスーツ姿の芝野だが、紋付きはかまで登場。日本棋院の小林覚理事長から「允許状」が、朝日新聞社の渡辺雅隆社長から賞金3100万円の目録が渡された。
芝野は謝辞で、「名人戦は緊張と不安でいっぱいでしたが、台湾の第2局で昼食のチャーハンを半分しか食べられず、そこで吹っ切れて勝つことができた。それで気持ちが楽になりました」とシリーズの分かれ目となった“秘話”を披露して会場の笑いを誘った。慣れぬ異郷の地での大勝負。ふだん食べ残すことのない食事を残してしまったことで、かえって開き直ることができたのだという。
「これから碁の内容はもちろん、ふだんの言動も含め少しずつ成長できればいいなと思います」と締め、盛んな拍手を受けた。
芝野は、七大タイトル初挑戦となった名人戦七番勝負で10月、19歳11カ月で史上最年少名人を獲得。翌11月には王座戦五番勝負で井山裕太・前王座を破って二冠を達成し、破竹の勢いを見せている。
2019年11月29日
10月に囲碁史上初の10代名人となった芝野虎丸名人が井山裕太王座に挑む第67期王座戦5番勝負の第4局が29日、愛知県蒲郡市で打たれ、芝野が282手までで白番半目勝ちした。3勝1敗で王座を奪取、史上最年少の20歳0カ月で2冠となった。
終盤、井山が盛り返したが芝野はミスをせず熱戦を制した。「苦しんだ時間のほうが多かった。本当に運がよかった」。囲碁界の今後を占う戦いだった。平成の囲碁界は2度の7冠独占を果たすなど、井山が「一強時代」を築いてきた。
虎丸名人が直接対決で絶対王者を倒し、「ポスト井山世代」の先頭に躍り出た。2冠保持の最年少記録も8年ぶりに更新した。これまでの記録は11年に井山が達成した21歳11カ月。2冠について「ぜんぜん実感がわかないです」と、はにかんだ。虎丸名人がマイペースで突き進む。
2019年11月18日
山梨県甲府市「常磐ホテル」で行われた第67期王座戦第3局は、262手まで黒番:芝野虎丸名人の1目半勝ちとなりました。対戦成績は芝野名人の2勝1敗に。第4局は11月29日(金)愛知県蒲郡市「銀波荘」で行われます。
2019年10月25日
第67期王座戦五番勝負の第1局が25日、大阪市北区で行われ、芝野虎丸名人が271手までで、井山裕太四冠に黒番半目勝ちし、初の王座奪取と2冠に向け発進した。7冠制覇を2度成し遂げた井山王座と、今月8日に史上最年少で名人を奪取した芝野名人が、七大タイトル戦で顔を合わせるのは初めて。
終局後、芝野名人は「これからも大変だと思うので、これまで通り頑張れれば」、井山王座は「次の対局まで少しあく。いい状態で臨めるよう準備したい」とそれぞれ話した。
井山王座は今年出場した棋聖戦と本因坊戦を防衛。現在、天元戦でも許家元八段の挑戦を受けている。5連覇または通算10期獲得で名乗れる「名誉称号」を棋聖・本因坊・碁聖で保持しており、今シリーズではさらに「名誉王座」の獲得がかかる。
2019年10月5日
阿含桐山杯全日本早碁オープン戦の決勝戦が5日に行われ、張栩名人が一力遼八段に白番中押し勝ちし、優勝しました。張名人は6日に静岡県熱海市に移動して、7日から芝野虎丸挑戦者との名人戦第5局に臨みます。
張栩名人は「一力さんには一方的にやられていて、久しぶりに勝てた。まさか優勝できるとは思っていなかったのでうれしい」と笑顔を見せ、一力桐山杯は「きょうの碁は後半、ミスが多かった。またこの舞台に戻って来られるよう頑張りたい」と話しました。
2019年10月8日
第44期名人戦7番勝負第5局は、挑戦者の芝野虎丸八段が、252手までで張栩名人に白番中押し勝ちした。対戦成績を4勝1敗とし、初挑戦で名人を奪取。最年少19歳11カ月での7大タイトル獲得で、09年に井山裕太四冠が達成した20歳4カ月を10年ぶりに塗り替えた。
14年にプロデビュー。将棋で藤井聡太七段がデビューして旋風を起こした17年に、芝野もブレークした。第26期竜星戦で初タイトル獲得。17歳8カ月は史上最年少だった。規定で、当時の三段から七段へ飛び級した。プロ入り2年11カ月での全棋士参加棋戦制覇と、七段昇段は史上最短だった。翌年には日中竜星戦で、世界最強と言われる中国の柯潔九段も下した。
芝野は規定により9日付で九段に昇段。日本棋院によると、こちらも最年少、最速での最高段位到達となる。
◆芝野虎丸(しばの・とらまる)1999年(平11)11月9日、相模原市生まれ。6歳の頃、ゲームソフト「ヒカルの碁3」を父からもらい、囲碁を始める。14年9月、プロ(初段)に。15年二段、16年三段、17年、竜星戦で優勝して七段に。新人王戦も制した。19年八段。17年には最多対局賞、最多勝利賞、連勝賞(66局53勝13敗、16連勝)
2019年9月26日
名人戦七番勝負第4局は、挑戦者の芝野虎丸八段が張栩名人に中押し勝ちし、3勝1敗で初の7大タイトル獲得にあと1勝と迫りました。奪取に成功すれば最年少記録になります。
10代名人にあと1勝と迫った芝野八段は「先に3勝できたんですが、もう1回勝たないといけないので、これまで通り頑張りたいです」と話しました。
第5局は10月7日から、静岡県熱海市の「あたみ石亭」で打たれます。
2019年9月24日
張栩名人に芝野虎丸八段が挑む第44期囲碁名人戦七番勝負(朝日新聞社主催)の第4局が25日、兵庫県宝塚市の宝塚ホテルで始まる。
ここまで挑戦者が2勝1敗で一歩リード。史上初の10代名人の誕生にあと1勝と迫るか。連覇を目指す名人が勝敗をタイに戻すか。シリーズは中盤の大きなヤマ場に差しかかった。対局は、持ち時間各8時間の2日制。挑戦者の先番で午前9時に始まり、26日夜までに決着する。立会人は坂口隆三九段。
24日午後6時から宝塚ホテルであった前夜祭には、現地のファンら約100人が集まり、両対局者を歓迎した。
主催者らのあいさつのあと、宝塚市観光大使リボンの騎士「サファイア」から花束を受け取った両対局者は、壇上で第4局に向けて決意表明した。
最初に芝野挑戦者が、小さな声で「みなさま、こんばんは」と話し始めると、会場から「がんばれー」とのかけ声が。芝野挑戦者が「宝塚は初めてだが、ホテルがすごくよくて、いい気分なので、この調子で、いい碁が見せられるように頑張ります」とはにかみながら続けると、合間に女性ファンから「かわいいー」との声もあがり、会場は和やかな雰囲気に包まれた。
一方の張名人は「去年も第4局でこの場に立っていたが、あの時は足を軽く骨折していて、そのあとの碁の内容もまずかった」と明かし、「まさかこの場に立てるとは思っていなかった。あの時は苦しかったが、過ぎてしまえばいい思い出。今年も1勝2敗で苦しい状況だが、今年は去年とは違う形でいい思い出をつくりたい」と話し、会場を盛り上げた。
2019年9月20日
第67期囲碁王座戦(日本経済新聞社主催)の挑戦者決定戦が20日、東京・市ケ谷の日本棋院で打たれ、芝野虎丸八段(19)が午後6時4分、195手までで許家元八段(21)に黒番中押し勝ちし、井山裕太王座(30)への挑戦権を獲得した。芝野八段の王座挑戦は初めてで、王座戦では最年少の挑戦者となる。
5連覇、通算7期目を狙う井山王座との五番勝負第1局は10月25日、大阪市のウェスティンホテル大阪で打たれる。
対局後、芝野八段は「難しい対局で、勝ててよかった。(井山王座と)早くタイトル戦で戦いたかった。どれぐらい打てるか楽しみだ」と話した。
芝野八段は国内四冠をもつ井山王座を追う若手のホープだ。読みが深く、攻めと守りのバランス感覚や形勢判断に定評がある。井山王座との対戦成績は芝野八段の1勝0敗。
8月に七番勝負が始まった名人戦で七大タイトルに初挑戦し、第3局まで張栩名人(39)を2勝1敗とリードしている。
芝野八段は1999年生まれ、神奈川県出身。2014年に入段し、17年に竜星戦で優勝すると、18年の日中竜星戦で世界最強の柯潔九段を破って優勝した。19年、名人戦の挑戦権獲得により八段。